1.概要
大学堂ではかねてから“豊能町に放送局を作ろう”というプロジェクトのもと、まずは手始めにYouTubeを使った動画配信サービスを手がけています。
企業と言っても実態はまだまだ、世代平均以下の所得しか無い1個人のポケットマネーから捻出した予算を使って赤字を出しながらやりくりしている現状で、つまり平たく言えば「ちょっと貧乏なおじさんのお小遣いをやりくりしてどうにかこうにか回してる趣味の領域」に過ぎません。
ゆくゆくは賛同が得られるようになって予算が増えることもひとつの理想ですが、限られた予算のなかでいかに工夫してミニマムに動画配信を行っていくか、そのノウハウにもきっと需要があるはずです。
こんな経験、一生のうちに一度する人のほうが少ないなかで需要がある情報なら共有した方がきっと誰かの役に立つと思い、まだまとめきれてない中でもどのように機材をそろえていったか書き記しておきます。
2.どんな番組を作っているか

こんな感じで、地元民で集まってなんかダラダラとトークやろうぜ!みたいな企画・構成になっています。
トークがメインの番組なので、技術的な特徴は大きいもので次の二つ。
- 映像はプアでもいい
- 音声は聞き取りやすくないとだめ
つまり機材や技術は映像よりも音声につぎ込む割合が多くなります。
3.映像機材
少ない予算(同世代の平均より少し所得が低いおじさんが捻出できる小遣いの範囲)で必要最小限の映像機器をそろえることを目的としました。
必要機材リストは次の通りです。
- ビデオカメラ
- HDMIスルーできること
- 充電しながらHDMIスルーできること
- HDMIケーブル
- キャプチャーデバイス
順番に紹介していきます。
3-1.ビデオカメラ
「HDMIスルー」という耳慣れない言葉が出てきました。これは、ビデオカメラが起動しているときに映っている映像を、そのままHDMIに出力できるかどうかの機能のことです。
ビデオカメラにHDMI出力端子がついてあったとしても、撮った映像を再生するときに出力できても、撮りながら出力できないカメラがあります。
撮った動画をあとで編集して配信するのであればそれで問題ないのですが、私の場合はライブ配信がメインですので、ビデオカメラを起動しているあいだじゅうHDMIで出力できる(しかも「録画中」といったような余計な情報が映り込まない)ことがビデオカメラの必須条件になります。
私がすでに持っていた、映像機器は次のようになっていました。
HDMIスルー | 充電しながら撮影できるか | |
CANON EOS 6D | できない | できる |
GoPro HERO5 | できる | できない |
手持ちの機器でのライブ配信は痛し痒しでやりたいこととうまくマッチしないので、できるだけ最安値で条件を満たすカメラを探すことにしました。
中国製だと上記の機器より安いものもありましたが、ひとまず条件を満たして長持ちしそうなJVC製のカメラを買いました。私が購入したときは23,500円でした。
2020/06/09追記
筆者はまだ試していませんが、EOSをウェブカメラとして使えるようになるツールがキャノンから出てるようです。これが使えればカメラに関しては今あるキャノンのEOSkissで事足りるような気がします。
キヤノンのWebカメラ化ソフト「EOS Webcam Utility Beta」ができるまで – デジカメ Watch
2020/06/18追記
GoProだと充電しながらHDMIスルーできないと書いていましたが、できることがわかりました。
おそらく充電機器側の問題で、USBパワーデリバリー機能のない充電器で充電してたのでそう勘違いしていたようです。
ですのでGoProでの配信、少し広角めな絵作りが独特ですが便利ではありますのでおすすめです。
3-2.キャプチャーデバイス
平たく言うとビデオカメラのHDMI出力を、PC側ではUSBカメラとして認識させる機械です。これがないと、ビデオカメラからHDMIスルーされた映像をPCに取り込むことが出来ません。逆に言うとこれを使うとPC側ではUSBカメラとして認識されるので、動画配信がやりやすくなります。
じゃあ最初からUSBカメラを買えば良いのかもしれませんが、たしかに映像は多少はプアでもいいのですがさすがにUSBカメラではその「多少プア」さを大きく下回って低品質だったので、結果としてHDMIスルーできるカメラとこのキャプチャーデバイスが必要になったという経緯があります。
言い方を変えるとWEBカメラの画質で充分という場合は、この映像機材の項目そのものが必要ない情報となります。
私は上記のようなデバイスを15,798円で購入しました。
購入して1年くらい使っていますが今のところなんのトラブルも無く、HDMIスルーできるカメラをこれに接続してPC側のUSB3.0のポートに差し込めばWEBカメラとして使用できるようになります。
2020/07/20追記
一時的に品薄ですが下記のようなスイッチャーも試してみたいです。
2020/08/22追記
上記スイッチャー導入しました。機器の解像度関係なく、HDMIスルーできれば4台まとめてスイッチングできるのでとっても便利!
4.音声機材
前述したようにトークがメインの番組ですので音声は重要です。
ですので、紆余曲折試行錯誤しながらそろえていった機材を、いきなり答え合わせだけすることもできるのですが、あえてその紆余曲折した課程を記していきます。
「これさえ買えばOK!」な、いきなり答えだけを書くことも出来るのですが、「俺は答えを知ってる。音声は重要だから最低でもこの機材は必要だぜ。失敗した俺が言うんだから間違いない。いきなり正解を教えてもらうお前は幸せ者だな!」みたいなトーンで正解だけを紹介しても、きっと誰も参考にならないと思うので、「なぜこの高額な機材が必要だったのか」をしっかりと書き記していきたいからです。
4-1.しゃべるのが一人だけならそんなに苦労はしなかった
上記のような、USBマイクを一本買ってPCに差すだけです。
もしくは次のようなオーディオキャプチャデバイスを買います。
いずれにしても、マイクを一本、USBでPCに繋げてさえしまえばいいので、特に悩む必要ありません。
ただ、トーク番組なので複数人数でしゃべろうと思ったとき、人数分のマイクを使いたいと思ってから迷走がはじまりました。
4-2.ピンマイクを3本つなぎたい
検索して安かったピンマイクを3本、PCにつなぐにはどうしたらいいか考えました。
4-2-1.マイクをUSBで直接PCにつなぐ
先ほどのこれを3つ買って、それぞれPCに刺せばいけそうです。
ですが、今後マイクが増えるたびにPC側で管理しないといけなくなるのは現実的に賢い運用になるとは思えなかったので、マイクをミキシング(要はPC側には1系統の入力だけにまとめてしまうこと)することを検討しはじめました。
4-2-2.二本だけなら簡単なんだけど……
スプリッターの存在は知っていたので、これを使えば2本のマイクなら1系統にまとめられそうです。この要領で、複数のマイクをまとめられる機械を探してみました。
4-2-3.マイクの音がPCにこない
ここからが迷走のはじまりです。
まず最初にこれを買ってみました。が、音がこない!
マイクに向かっていくらしゃべれども、PC側のレベルメーターはびくともしません。
はは〜ん、これはあれだな……。雑誌の後ろとかにある通販の怪しい機材……。
変なものをつかんでしまったのは仕方ないので、次にどうしたら良いか考えます。
音声は原理としてはスピーカー(出力)とマイク(入力)は似たような考え方ができるので、スプリッターでスピーカーを二つに分けるときはアンプ(増幅)しないといけないので、逆にマイクはゲイン(利得)させないといけないような気がします。中学のとき理科か技術の時間に習ったような……。
ではゲインさせるためには電源がないといけないので、いくら安いとは言え電源が必要ない上記の機械は複数のマイクをミキシングするときにうまく動かないのは当たり前なのかも知れません。
そうとわかれば、次は電源付きで安く買えるミキサーを探してみます。
ありました。
でも結論から言うとこれもダメでした。まったく音が入ってきません。
「もういやだ!」
ここまででかなりの出費。知識不足から来る安物買いの銭失いを地で行く行為に私は金銭的にも精神的にもかなり消耗してしまいました。
4-3.ミキサー
結論から言うとミキサーはYAMAHAのMG10XU、これを買えば正解です。
何も迷うこと無くこれを買いましょう。ひたすら貯金あるのみです。
実をいうとミキサーで迷走してるあいだに、MG10XUの存在は知っていました。ただ、ここまで高価な機材が必要になると思ってない段階では、ほかの格安の機器でもし問題なく音声がPCにはいってくるのなら、それでいいと思っていたのです。
ところが実際にはほかの格安機器ではトラブル続きで、ほかにもMG10XUと同等機能で海外製の安い機械は見つかるのですがトラブルのあった機械は何がダメでどうすればよかったのか、その知見が貯まらないことが一番の問題だったので、これ以上安物をつかんで失敗するわけにもいかず、結果としてきちんとしたミキサーを手に入れることが何よりも重要だと悟ったのです。
ほかにもMGシリーズや、同じYAMAHAのAGシリーズなど、ラインナップが豊富に用意されていますが、そのなかでとりわけピンポイントにMG10XUシリーズに至った理由はこちらです。
- 最低3本の同じマイクをさせる最小構成が無印MG10とMG10XUとMG10XUFの3つ
- 最終的にUSBで出力できるのはMG10XUから
- 無印のMG10はアナログ出力のみ
- 省スペースなのはMG10XUのほう
- MG10XUFだとスペースをとってしまう
実際配信が始まってからだと、チャンネルごとのボリューム調節がやりやすいMG10XUFもよかったんじゃないかなーと思うんですが、配信中はオペレーションが煩雑になりますので、できるところから始めるという意味でも割り切って使えるMG10XUでよかったと思います。XUFと比べて全然できないわけじゃないですし、コストパフォーマンスに優れた商品だと思います。
4-4.マイク
ちゃんとしたミキサーを買ったので、これでようやく満足に配信ができるだろうと思ったのですが、なんとピンマイクの音が全然はいってこない!
さすがに心が折れそうになりましたが、なんとかYAMAHAのサポートセンターに問い合わせをしてみます。
サポートセンターから親切に、手持ちのピンマイクはこのミキサーでは使えないことを教えてもらいました。
購入する前とサポートセンターに問い合わせる前にいろいろ調べていたんですが、私の知識不足から、使えないマイクがあるとは調べきれなかったので、盲点でした。
ミキサーの製品情報にはダイナミックマイクとコンデンサーマイクが使えるとは書いてありまして、ピンマイクはダイナミックマイクなので使えるだろうと思っていたわけです。
ところがダイナミックマイクでも使えない機種があるとなると、これから使えるマイクを買い足さないといけないわけですがどうやって見分けたら良いのか、サポートセンターに教えてもらいました。
- 確実なのがファンタム電源+48vで動くコンデンサーマイク
- ダイナミックマイクだと、確実に動くと思われるのはメーカーでみたほうがいいとのこと
- Audio-Technica
- Shure
- 上記2メーカーのダイナミックマイクなら確実に動くとのこと
ということでまだまだ、ミキサーで使えるマイク選びが待ってます。
4-4-1.ダイナミックマイク
「コンデンサーマイクなら確実につながる」とは言われても、ここまででかなり出費している弊社。じゃあということで気軽に高額なマイクをこれ以上買い足すことが出来ません。
なので必然的に安いダイナミックマイクを探すことになります。
3本まとえて買うことになるので、Audio-Technicaのダイナミックマイクの中でも一番安いものを。
結果は、やっと音が入るようになりました!
いやー長かった!
というわけで晴れて配信したのがこちら。
んん〜〜〜?
いいんだけど……。
ちょっと音が小さいっていうか……。
声聞き取りづらい?
やっぱダイナミックマイクじゃあかんのか?
ここまできたらもはや意地です。
4-4-2.コンデンサーマイク
3本買ったれや!!
ここまで時間と資金をかけて、聞き取りにくい音声なんてあり得ない!コンデンサーマイク3本もいっぺんに買うの痛手だけど、リラックスタイムに聞いて欲しい番組を目指すだけに、できるだけ音声はクリアに届けたい!!!!清水の舞台から飛び降りる覚悟で、3本まとめて買いましたーーーーー!!!!!
1本しか届かなかった!!!!!
1本しかないのに3人でしゃべるとやっぱり聞き取りづらい!!!
宅急便さん!いつもお世話になっております!!!!!
5.やっと機材が揃いました
最終的に3本揃って、しかもゲインとかコンプレッサーとか調整して、やっと配信の入り口に立つことが出来ました。
こんな感じで紆余曲折試行錯誤しながらの配信ですが、今現在、毎週木曜日正午から番組をお届けしております。時間は変更になる場合がありますので、よろしければチャンネル登録して配信情報をチェックしてみてください。
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カメラについて見えて来たこと | Office Nakao · 2020年10月6日 11:04
[…] 低予算動画配信のスゝメ […]
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